「技術」「信頼」を考える?!・・プリウスのリコール問題から

トヨタ自動車のハイブリッド車「プリウス」が、ブレーキが瞬間的に利かなくなる問題で国土交通省にリコール(回収・無償修理)を届出というニュースで賑わっています。

 先月頃から、度々アメリカでの事故例などニュースで取り上げられており、欠陥かどうかが論じられていましたが、豊田章男社長は「不具合」を認め陳謝しました。

 早速、2/9(火)の朝日新聞の天声人語欄には次のような記載が載っています。・・・ひと月ほど前の小欄で、プリウスの成功を「一流の技術陣がアクセルを踏み込んだ時の馬力を思う」と書いた。組織にも「心技体」がある。技は一流でも、心や体が覚束なければ信頼はついえてしまう▼「不良品にならなくても、『こんなものを納品したら会社の恥だ』と妥協しない人と、『まいいや』と見逃す人では、ネジの出来がまるで違う。ネジが積まれた山を見たら美しさが違うんですわ」。作家の小関智弘さんの『現場で生まれた100のことば』に見つけた、あるネジ職人の心意気だ▼見事な「ものづくり魂」に比べ、不良品にあらずと言いつのるトヨタは小さく見える。守るものは体面ではなく、お家芸の「品質と安全」であってほしい。・・・

長く引用しましたが、この記事を読ませていただき、つい3ヶ月前の、兵庫県のE-ディフェンス(防災科学研究所・兵庫耐震工学研究センター)での長期優良木造3階建てを試験体とした実大振動実験の結果報道を思い出しました。

 この実験では、阪神淡路大震災のような大地震を想定し、それに耐えれる長期優良の木造3階建て(性能表示制度における「耐震等級2」相当)を建てて実大の耐震実験を行ったのです。結果的には、倒壊を免れると予測された長期優良住宅となる「耐震等級2」の建物は倒壊し、倒壊させるべく接合をゆるめ遊びのある組立をした「耐震性のない?」住宅が倒壊を免れるというお粗末な結果となったのです。実験を担当した研究グループ(防災科研と木を生かす建築推進協議会)は、「耐力壁の先行破壊で終局が決まっており、現行設計法の想定通りであることが確認できた」と訳のわからない答弁報道は印象的でした。「倒れなかった家より、倒れた家のほうが安全」とでも言いたいのでしょうか。と思えるほど素人にも判断できる結果だったのではないでしょうか。このニュース記事、大きな圧力が働いているのか意図的なのか、最近ではインターネットも含めほとんど話題に上っていません。

 プリウスのリコール答弁も、E-ディフェンスの耐震等級2の実大耐震実験の倒壊答弁も、余りにも説得力のない答弁のように思えてなりません。自らの技術や品質に自信を持つのは良いのですが、忘れてならないのは人の「安全」だと思います。二つの話題は、このことを忘れているような気がいたします。車も家も「人命」優先を考えるべきものではなかったのでしょうか。・・

 ここで先日の「古民家再生を探る」特別セミナーでのお話を伺った金沢工業大学と秋田県立大学の名誉教授である鈴木有教授のお話になるわけですが、鈴木先生は阪神大震災で被災された多くの民家に興味を持たれ、直接被災地を訪れ、倒壊を免れたその数の多さとその構造に注目し、日本の伝統的な木造建物の持つ粘り強さに着目し、「構造体の持続性を高める伝統木造溝法」の合理性を、日本で初めて実物大の実験用住宅を使って実証された方です。

 その鈴木先生がこうおっしゃっています。・・伝統的溝法の建物は全ての部分に無駄がなく、また構造がそのまま意匠になっているから、人が美を感じる一つの大きな源になっている。重力の世界にいる我々は、重力に耐えるべく力学的に合理的につくられた対象物を観ると、本質的に美しいと感じるようにできているようである。・・・例えば(洗練された民家)を観たとき、緊張感や均整感のある美しさとともに、その美しさはある種の風格や品格に通じると感じるのは、筆者一人ではあるまい。・・と。

 当社は、前述の「つくりに拘ったネジ山の美しさ」や、「重力に耐えうる合理的な構造の美しさ」を意識して、かつ「人命優先」の家造りを目指したいと思っています。・・・

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