舞鶴市O邸

築90年程の茅葺屋根をトタンで覆った家で,数回の内部改修や増築を行っている建物でした。
平屋建で屋根裏物置があり,天井が低く,小さく区切られた間取りでしたので,建築主は天井を高く広い空間を希望されました。また,築年数が大きいことから歴史観を残しつつ,高齢のお母様のために出来るだけ段差のないようにとの要望がありました。
周囲を山に囲まれ,湿気がすごい立地のため,柱や梁の腐食がひどく進んでいました。
設計にあたっては,狭く区切られた間取りから広くゆったりとした間取りとし,天井も梁を化粧として見せる位置まで上げ,大きな空間としました。
玄関は入った時に大きく感じるように,洗面,トイレへの通路との仕切りをなくし補強として入れた柱(大黒)を化粧としました。天井を高い位置にし,点検等のため天井から屋根裏に上がれるように化粧の横引戸を取り付けました。
建物は築年数が大きい上に,ひどい湿気で至る所の柱,梁は腐食,割れ,折れがあり,梁補強も含め取り替えに時間を要しました。
居間は南側に庭があるので,縁側の仕切りを取り,一体のものとし,広くまた庭の見える空間としました。
この地域は冬にはかなりの積雪があるため,北面は立上りを高くし外壁をプリント鋼鈑貼とし,内部の湿気対策と床下換気口の対応として床にエアスリットを入れました。
南側の玄関廻りはお母様のことを考えて,玄関へのアプローチをスロープとし,また陽だまりの空間を取りました。

ステンドグラスの光が差し込む家

この建物はお母様が一人で住んでおられましたが,ご夫婦が帰って一緒に住むために改修を行いたいとのことでした。
間取りは田の字型の部屋に一部増築した建物でした。
2世代が住むということから,2つの大きな要点がありました。まず1つは,お母様のこと。もう1つは,夫婦の生活と生き方。
奥様はステンドグラスの趣味をお持ちで,ステンドグラスの映える空間で,暖かくゆったりとした時間を過ごせる空間,食事を作ったり食べたりを楽しくできるようにとの要望がありました。
お母様については,まず安全に過ごせるように段差をなくしてほしいとの要望でした。
設計するにあたって,食事をしたりゆったりとしたじかんを過ごす空間を要望されていましたので,中心となる居間をLDKとし,一部を吹き抜けとし,吹き抜けの南面からステンドグラスの光が入る空間を想定しました。
吹き抜けは2階廊下,寝室に接し,2階ともつながりのある大きな空間にすることができました。
また,吹き抜け,2階廊下の天井は杉の羽目板貼とし,ゆったりとした空間とマッチしたウッディ―の感覚となりました。
また,玄関横の以前洋間であった場所は,玄関から土足で入れるようにし,お客様にも対応できる部屋としました。
居間,玄関,玄関横の部屋の壁は塗り壁とし,質感を感じられる空間となりました。
また,キッチンは食事を楽しむため対面で,L=2700の大きなキッチンを設置しました。
お母様のことを考え,段差解消を行い,必要なところに手摺り等を取り付けました。

古材を活かす二世帯の家

京都北部の綾部市にある昔ながらの里山風景が残る地域に建つ古民家の全面改修です。
この建物は,約140年前に近隣の福知山市に建っていた建物を解体し,福知山・綾部を通っている
由良川を利用し運び,この地に移築されました。
この建物を,後世に繋ぎたいという想いを建築主が家族に伝えたところ,孫の家族がこの意思を受け,2世帯で住める家へと改修することとなりました。
要望としては,①普段の生活は動線含め便利にしてほしい。②お互いのプライバシーは守るようにしたい。③浴室は1つでも,生活スタイルが違うため,キッチンは2つほしい。というものでした。
柱,梁ともに傷みは少なく,また,家の傾きもほとんどなく,とても移築後140年には思えない立派な建物でした。
お互いのプライバシーを守るように,田の字型の居室を間仕切ってつくり,廊下のみでつなぐようにしました。
また,各部屋にはできるだけ既存の梁をみせて古民家の良さを引き出しました。

福知山市S様邸

築100年以上で数回の増改築が行われた2階建の建物です。
当初は養蚕の為の建物ですので,階高は低く圧迫感のある暗く寒いといった印象でした。
階高の低い建物に下屋廻りをさらに増築するため,1階床高を下げたため,床下換気も少なく,水廻り部分には白蟻の跡も見られました。
増改築のため,各部屋が小さく区切られて,動線が重なり不便を感じていました。
また,玄関横の応接間も使用されないまま物置となっていました。
2階は4部屋あり,畳の部屋でした。

建築主の要望として,①暗く寒い状態を直したい。②各部屋の天井の低い空間をゆったりとした空間にしたい。③動きやすい動線。④キッチンに力を入れたい。ということでした。
設計にあたっては,まず建築主の要望である,暗くて寒い空間,キッチンを中心としてゆったりとした動きやすい動線を主眼としました。
薪ストーブのある1階天井を撤去した吹き抜けのあるLDKを中心として,居間,水廻り,階段の流れをスムーズになるように考えました。
また,玄関ホールには大きな収納,部屋ごとの小さな収納としました。
勝手口をキッチン用と洗面物干し用と2ヵ所に設けて外部との繋がりを取り,洗面勝手口は正面玄関横となるため,高い格子で囲いました。
LDKを吹き抜けとする事として,2階各部屋につながる廊下がゆったりとした空間となり,吹き抜けに設置した薪ストーブにより2階の各部屋は暖かい空気で満たされました。
LDKの既存の柱・梁は表しとしてメリハリをつけました。
2階寝室,LDK吹き抜けの天井は高さを取るため,一部勾配天井としています。
玄関廻り外部は漆喰の塗り直しとしています。

田園に建つ古民家

この建物は,福知山市内周辺部の少々小高い位置にあります。
主道路から少し入った場所で,近くには運動公園があり,周辺は田や畑のある環境に建っています。
築100年以上で,土間,田の字型,縁側,廻り縁,中2階のある大きな建物です。
前の持ち主が住まれなくなり数年が経っていましたので,水廻り部分が少々傷んでいたり,屋根(鉄板波板)は赤錆が目立つ状態でした。
建築主は若い夫婦で,この建物は少々大きすぎる感がありましたが,将来を考え購入し,再生に至りました。
梁間隔の大きな建物ですので,夏は涼しいのですが,全体的には暗く寒い建物です。
一部減築し,必要な部分を残す再生となりました。
建物も大きいゆえ,ゆったりとした空間であり,太い柱,梁を残してどっしりとした建物を要望されました。
再生にあたり,この建物の太い柱,梁の力強さ,ゆったりとした空間をとりつつ,プライベートの取れる再生を望まれていました。
人の住んでいる時期がありましたので,傷んでいる箇所の補修から始まりました。
水廻り部分では白蟻の跡があり,駆除を行い,柱根補修を行いました。
玄関ホール一部は,収納部屋とし外窓は既存の面格子を補修して再利用しています。
玄関戸は既存再利用です。
建物の中心となっているLDKは吹き抜けとし,吹き抜けの一部に薪ストーブを置いています。
LDKは胴差し上部を荒壁の上中塗り仕上げとし,下部は珪藻土塗りとし,壁のもつ柔らかさを出し,太い柱,梁の力強さを表しています。
また,天井近くに高窓をとり,明り取りとし,暗かった空間の解消を行っています。
縁側の床板は再利用,建具も再利用しました。
外部の正面は漆喰で塗り替え,その他は焼杉板貼りとしました。
屋根は既存の屋根の上に鉄板小波板のカバー工法として葺いています。

ひなたの明るく暖かい家

この建物は,京都北部の綾部市にある昔ながらの里山風景が残る地域に建つ古民家の全面改修です。
建築主の義祖父母の家を改修し,後世に残したいとの想いから改修に至りました。
建物は,土間,田の字型,縁側のある母屋に2階建離れを増築した建物でした。
この建物は少々大きすぎる感がありましたので,離れを解体し母屋のみの再生となりました。
建築主の要望として,①開放感のあるリビング。②柱や梁を感じられる部屋。③古建具を積極的に再利用してほしい。というものでした。
再生にあたり,耐久性をどのように高めるか,古き良きものと新しいものとの調和をどのように整えるかを前提に考えました。
次に,山が近くにあり,周辺は田畑が広がっている環境であることから,湿気対策としての通風を確保することにしました。
家族団らんの場であるリビングダイニングは,天井を上げ,既存梁を出すことで古民家の醍醐味を魅せました。
既存古建具は,補修し再利用するとともに,意匠としても利用しました。